私は悪くない、と思うけど。

　親がよく言う言葉、「××するような子にするつもりじゃなかったのに」「××するようになって欲しかったのに」。言われるたびに私は応える、「だったらそういう風に育てればよかったのに。」
両親共働きだからしょうがないと今は理解しているけれど、小さい頃から近くにいたわけじゃないもの。私は――姉がどう思ってるかは知らないけれど少なくとも私は、あんまり親に育てられたという意識がないんですがね。いや、経済的なことは全部親任せでしたけどね。
昔の記憶、覚えてる限りで漁ってみてもどこかに出掛けたっていうの以外だと親ってあんまり登場しませんもの。たぶん、昔は一週間のあいだに休みの日くらいしか顔あわせないとかざらだったんじゃないかしら。
物心ついてからだって母の近くにいたのは姉だったし、父は仕事の拘束時間の長い人だったし？　近くにいなかった人に育てられたとはあんまり認識してないんですけどねー。
放任主義だったんですかと言えば、父は主義というほどのことでもないと応えてくれました。主義じゃないのに放任してたってことは放棄してたんだと受け取って構わない？　放棄してたのに自分の思い通りに育たなかったから文句言うとか、納得できないんですが。

今更言ったってどうにもならんけどさ、昔はたぶん私寂しかったんだよ。小さい子どもですから、大人の事情なんて解りませんし。近くにいてくれることが、イコール愛されてるって認識に繋がると思うんですがの。お二方とも忙しい職をお持ちですから、それ以外にあんまり手ぇかけられなかったんでしょうけどねー。
そうやってあんまり感心持ってないと受け取れる態度でいるのに、期待だけはかけるの。わたしが無償の愛なんてものを信用しないのも無理ないと思いません？　それに関してだけは、わたし自分は悪くないと思うんだけど、どうでしょうかね。

いつぞや誰かに言われた言葉、「君は愛されたがりだけど、愛さない」。まったくもってその通りかもしれません。だって愛ってなにか解らないもの。優しくされるのは好き。愛というのが優しくする事だというのなら、僕は確かに愛されたがりでしょうね。優しくされるのは居心地がいいもの。
でも違うなら、僕には愛し方っていうものが解りません。優しさに種類があるとしても、愛に分類される優しさがどんなものか解りませんから。
条件付の愛ならわかるかもしれないけれどね。これをしてくれるなら、私も代わりにやってやろうじゃないか、という事なら解るから。まぁでも、愛ってなにって訊くようなうちは無理か。

世の皆様方はどこで愛というものを学ぶのでしょうか。土台になるものを家庭で学ぶのだとしたら、覚えるのが遅くても私は悪くないと主張させてください。
だって僕はいまも寂しいままなんだ！　男女間の愛は要らない、そんなものより親の愛が欲しかったよ。無償の愛っていうやつ。それを貰えるほどいい子じゃないのは解ってるけど、愛されてるっていう自信が欲しかったと思うこの頃です。